2009年12月10日木曜日

Organic Food オーガニックフードに関する論争










今日のブログは長い。書く方も読む方も「忍耐力」とでもいおうかしら。
私の大学院でOrganic foodに関する研究が行われ2009年7月にAmerican Journal of Clinical Nutritionに発表された。 http://www.ajcn.org/cgi/content/abstract/ajcn.2009.28041v1


チームリーダーは、私達から授業がわかりやすいと人気の教授Alan Dangour (アラン・ダンゴー)博士。Food Standards Agency:FSA (英国食品基準庁)の委託を、LSTHM側が受けたもの。Alanは、食物と環境問題に関係についても最近提言し、国会に呼ばれたり時の人になって忙しそう。
過去50年分の52,471論文から、栄養と健康効果に関する証拠を研究 した。系統的レビユー(分析)を行った162の研究のうち、研究サイズなどを検討して、妥当的であると最終的に残った55(137作物,25家畜)の研究の精査の結果、通常の手法で栽培された食品と有機的に栽培された食品のについて違いがあるかを研究した。 
Vitamin C(ビタミンC)、Calcium (カルシウム)、Iron(鉄)などを含む、栄養素の大部分では、 有機的に栽培された食物と従来型の手法で栽培された食物の間には 違いが見つからなかった、という。

Meat(肉)、Dairy(酪農)、Eggs(卵)といった食品に ついて行われた研究でも、既に同様の結果が得られているとのこと。

今回の研究では、Nitrogen(窒素)→従来型の方が多い、やPhosphorus(リン)の濃度→有機作物のほうが多い、という部分では違いが見つかっているが、その違いは、 肥料の使用の違いや成熟の違いだという可能性が高いと考えられている。


有機栽培という事だけでは、公衆衛生的な栄養分での利点はないと報告書は結論づけている。


さて、では依頼先のFSAの自然食品に対する立場はというと、、、「中立的」だとのこと。これは、アランの大学内での講演に来ていたFSAのスタッフが注意事項として述べていた。
一般的にオーガニックフードを選択する理由として、「動物の権利保護への配慮」や「環境保護の配慮」などの多数の 要因が関わっているとしている。今回の研究は、 「人々が 自分が食べる食物について、正確な情報に基づいて選択を行う」ことを可能にしたかったとのこと。



同様に、Alanによると、「今回行った研究は、” 栄養的に優れているから”という基準に基づいて、有機的に栽培された食品(オーガニックフード)を選択する、という 行動を支持する証拠が、現時点では存在していないという事を 明らかにしただけ」とのこと。つまり、アラン達は、オーガニックフードは全く意味がないと言っているわけではない。
遠いところの有機栽培の野菜を、鮮度も落ちているのにわざわざ高いお金を払って買うより、近くで適切に栽培された旬の新鮮な野菜を食べた方が美味しい!ということをブランドに惑わされないで考えて欲しいということなのだ。まさに、日本で言う地産地消」
ところで、Alanは、最近オーガニックフードのお店にクレームを入れられっぱなしとなげていた。きちんと読んだり聞くと、彼が言いたかったことがわかるが、パッと読んだり聞くと勘違いをして、オーガニックフード反対者の意見だ!と思われてしまうんだろう。
「有機栽培に意味がない!」のではなく、「有機栽培だから栄養価が素晴らしいし高くなる、という売り方には疑問あり!」というのが、Alan達グループからの一部の小売り店についての問題提議なのだ。
では、それでもオーガニックフードを時に選択するのはなぜか??
やせた土地とふくよかな土地で育ったものであれば、もちろん後者の作物を買いたい。環境に優しい方法の農業を応援したい。が、私の答えだ。
もちろん、一番美味しいのは、庭でとれたての旬の野菜を食べること。祖父母・両親が、こまめに雑草を農薬をつかわないで、とれた野菜や果物は、格別に美味しかった。同じように、庭のぶどうはヤマブドウだったから、本当に野性的な味がしたものだった。
ちなみに農薬の長期的な影響に関する十分な研究は、人間の健康に 関してまだ行われていないこと、有機栽培と従来型についての大規模研究はまだ不十分なことも、Alan達は認めているし、必要だろうともいっている。。
だから、簡単には結論はでない。
ただ、有機・オーガニックを売り言葉に、適正な質のでないものを、高額で売ろうとする業者に惑わされないようにしたいものだ。

2 件のコメント:

  1. はじめまして、
    DR.CityAngelさんのところから伺いました。
    ブルンと申します。
    >遠いところの有機栽培の野菜を、鮮度も落ちているのにわざわざ高いお金を払って買うより、近くで適切に栽培された旬の新鮮な野菜を食べた方が美味しい!
    と、私も常々思っていました。わざわざオーガニックを選ぶ理由は、農薬の人体への影響に対する不安、持続可能な農業への支持、動物愛護精神であって、栄養価や味ではなさそうだ、と感じていたことが、大学院ではきちんと研究されているのですね。
    ところで、YUMYUMさんはイギリスではP.Y.O.の体験をしてみてくださいね。季節的に今は無理かもしれませんが、5月の初めにアスパラガスで始まり、ウィンブルドンの頃は苺というふうに、自分で摘み取って量り売りしてもらえる農場があるのです。やっぱり収穫したての作物は味が全然違いますよ。
    私のブログでP.Y.O.のことを少し書いてますので、よかったら覗いてみてください。

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  2. いいですね~。P.Y.O是非してみたいです。(ブログをさっそく覗かせて頂きました。)
    私も、このアラン達の研究を読んでからも、オーガニックフードを食べ物によって買っていますが、大きな違いは、今までよりもできるだけ新鮮な旬なものを食べるように努力するようになったことです。
    でも、都会のスーパーマーケットって、本当に旬を感じにくいですよね。小さな頃の八百屋さんの記憶に感謝です。

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